「節税」と聞くと、なんだか難しそう、あるいは「脱税と間違えられたらどうしよう」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

こんにちは、名古屋で税理士事務所を経営している佐藤健吾と申します。
私はこれまで15年間、多くの中小企業や個人事業主の皆さまと向き合ってきました。

その中で強く感じるのは、税金は「正しく怖がること」が何よりも大切だということです。
ルールを知らずに損をしてしまうのは、本当にもったいないことです。

この記事では、私が実際に顧問先にご提案し、「これは助かった!」と本当に喜んでいただけたリアルな節税プランを5つ、厳選してご紹介します。
難しい専門用語は使いません。
「これなら自分にもできるかも」と感じていただけるよう、丁寧にお話ししますので、ぜひ最後までお付き合いください。

目次

節税の基本をおさらい:「制度を味方にする」発想とは

節税プランをご紹介する前に、とても大切な基本についてお話しさせてください。
それは、節税と脱税は全く違うものだということです。

税金の仕組みと節税の違い

節税とは、法律で認められたルールの中で、工夫をして納める税金を少なくすることです。
一方で脱税は、売上を隠したり、嘘の経費を計上したりする、明らかな法律違反です。

例えるなら、節税は「決められたコースの中で、一番有利なライン取りを探して走る」こと。
脱税は「コースを無視してショートカットする」ようなものです。
ショートカットは、いずれ必ずバレてしまいます。

よくある「やりすぎ節税」が招くリスク

時々、「とにかく経費を使えば税金が安くなる」と勘違いされている方がいらっしゃいます。
しかし、事業に関係のない個人的な支出を経費にしたり、過剰な設備投資をしたりするのは危険です。

税務調査が入った際にそれらが否認されると、本来納めるべきだった税金に加えて、ペナルティとして重い「追徴課税」が課せられることになります。
これでは、節税したつもりが、かえって大きな損をしてしまいます。

中小企業・個人事業主が活用できる基本的な制度とは?

節税の第一歩は、国が用意してくれている有利な制度をきちんと使うことです。
例えば、個人事業主であれば「青色申告」を選択するだけで、最大65万円の特別控除が受けられます。

これは、国が「きちんと帳簿をつけてくれるなら、税金を少しおまけしますよ」と用意してくれた、いわばご褒美のような制度です。
このような制度を味方につけることが、賢い節税のスタートラインになります。

顧問先が笑顔になった!本当に喜ばれた節税プラン5選

それでは、ここからが本題です。
私が実務の中でご提案し、顧問先の経営者の方々が特に喜んでくださった節税プランを5つ、具体的な事例と共にご紹介します。

1. 「家族への給与支払い」で節税+事業の安定化

「奥さんやご子息に、事業を手伝ってもらっている」という方は多いのではないでしょうか。
その労働に対して、きちんと給与を支払うことで、大きな節税効果が生まれます。

節税効果の仕組み

家族に支払った給与は、事業の経費として計上できます。
これにより、事業全体の所得が下がり、結果として所得税や住民税が安くなるのです。
さらに、給与を受け取った家族も、給与所得控除という税金の優遇を受けられます。

誰に・いくらまで支払えるのか?

青色申告をしている場合、「青色事業専従者給与」という制度が使えます。
事前に税務署へ届出をすれば、生計を同じくする15歳以上の親族で、年間6ヶ月を超えて事業に専従している方へ支払った給与を、全額経費にできます。
ただし、仕事内容に見合わない高額な給与は認められないため、金額設定は慎重に行う必要があります。

実際の活用事例:家族経営の飲食店

名古屋市内で飲食店を営むAさんは、奥様が経理や接客を手伝っていましたが、給与は支払っていませんでした。
そこで「青色事業専従者給与」の届出をして、奥様に月15万円の給与を支払う形に変更。
年間180万円が経費として認められ、Aさん個人の所得税・住民税が年間で約40万円も安くなりました。
奥様も「自分の働きが評価されて嬉しい」と、仕事へのモチベーションがさらに上がったそうです。

2. 「小規模企業共済」の活用で将来の安心と節税を両立

個人事業主や小さな会社の役員の方にとって、一番の不安は「将来の退職金」ではないでしょうか。
この不安を解消しながら、今の税金も安くできる、まさに一石二鳥の制度が「小規模企業共済」です。

掛金の全額控除が可能な仕組み

この制度は、国が運営する「経営者のための退職金制度」です。
毎月の掛金(最大7万円)は、その全額が所得から控除されます。
例えば、年間で84万円(月7万円×12ヶ月)を積み立てた場合、課税対象となる所得をまるまる84万円減らすことができるのです。

退職金対策としての活用方法

積み立てたお金は、事業を辞めるときや退職時に、退職金として受け取ることができます。
受け取る際も、税制上非常に優遇された「退職所得控除」が適用されるため、手元に多くのお金を残すことができます。

成功事例:個人事業主から法人化を目指す方

Webデザイナーとして独立したBさんは、将来への備えに漠然とした不安を抱えていました。
そこで小規模企業共済への加入をご提案。
毎月3万円の掛金を積み立てることで、年間の課税所得を36万円圧縮。
「将来の安心を積み立てながら、目先の税金も安くなるなんて」と、大変喜んでいただけました。

3. 「倒産防止共済」の活用でキャッシュフローの安定と節税

「経営セーフティ共済」とも呼ばれるこの制度は、本来は取引先が倒産した際の連鎖倒産を防ぐためのものです。
しかし、使い方によっては強力な節税ツールにもなります。

取引先リスクへの備えにもなる制度

万が一、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなった場合、無担保・無保証人で掛金の最大10倍(上限8,000万円)まで借入れができます。
この「いざという時の保険」があるだけで、安心して事業に取り組めます。

年間最大240万円の控除をどう活かすか?

この共済の掛金は、年間最大240万円まで、法人の場合は損金、個人事業主の場合は必要経費に算入できます。
つまり、利益が多く出た年に掛金を支払うことで、その年の税負担を大きく軽減できるのです。
40ヶ月以上掛金を納めれば、解約時に掛金が100%戻ってくるのも大きな魅力です(ただし、解約手当金は雑収入として課税対象になります)。

活用事例:建設業の法人クライアント

建設業を営むC社は、特定の元請けからの受注が多く、常に取引先リスクを抱えていました。
倒産防止共済に加入し、年間240万円を支払うことで、万が一への備えを固めつつ、法人税の負担を軽減。
「利益をただ税金で払うのではなく、将来の安心のためにプールできる感覚だ」と評価していただいています。

4. 「経費計上の見直し」で“気づかなかった支出”を節税資源に

節税の基本中の基本でありながら、意外と見落とされがちなのが「経費の計上漏れ」です。
事業のために使ったお金は、1円たりとも漏らさず経費にする。
この意識が大切です。

節税の基本は“経費の見える化”から

「これは経費になるのかな?」と迷う支出はありませんか。
例えば、自宅兼事務所の家賃や水道光熱費、インターネット代金なども、事業で使っている割合に応じて「家事按分」して経費にできます。
まずは、ご自身の支出をすべて洗い出してみることが重要です。

クラウド会計で変わった支出の把握方法

最近では、銀行口座やクレジットカードを連携できるクラウド会計ソフトが非常に便利です。
お金の出入りが自動で記録されるため、支出の把握が格段に楽になります。
私が顧問先におすすめする際も、多くの方が「もっと早く使えばよかった」とおっしゃいます。

実例:広告宣伝費と交際費の仕分け再考

フリーランスのライターであるDさんは、取材先への手土産代をすべて「雑費」として処理していました。
しかし、これは事業関係者への贈答なので「交際費」として計上するのが適切です。
また、ブログ運営費を「通信費」としていましたが、集客目的であるため「広告宣伝費」とすべきでした。
このように、費用の名前を正しく仕分けるだけでも、税務署に対する説明責任を果たしやすくなります。

5. 「事業用資産の購入タイミング」で減価償却を最大限活用

パソコンや車、機械設備など、高額な資産を購入するタイミングも、節税に大きく影響します。
特に、年度末の駆け込み購入は注意が必要です。

年度末に駆け込み購入する際の注意点

減価償却とは、高額な資産の購入費用を、何年かに分けて経費にしていく会計処理のことです。
例えば、12月に車を買っても、その年に経費にできるのは1ヶ月分だけ、というのが基本ルールです。
「決算前に大きな買い物をすれば、その分が丸々経費になる」わけではないのです。

少額減価償却資産の特例とは?

しかし、中小企業には非常に有利な特例があります。
それが「少額減価償却資産の特例」です。
青色申告をしている中小企業や個人事業主であれば、取得価額が30万円未満の資産については、購入したその年に全額を経費にできます(年間合計300万円まで)。

実例:業務用パソコン・車両の入替での差

IT系の法人E社は、決算月に社員用のパソコン10台(1台25万円)の買い替えを検討していました。
この特例を活用することで、合計250万円をその期の経費として一括で計上。
結果として、法人税の課税所得を大幅に圧縮することに成功しました。
もしこの特例を知らなければ、何年にもわたって少しずつしか経費にできなかったのです。

参考: 税理士 神戸

節税プラン導入の落とし穴とその回避法

ここまで、効果的な節税プランをご紹介してきましたが、いくつか注意点もあります。

すべての節税策が「あなた」に合うとは限らない

ご紹介したプランは、あくまで一例です。
あなたの事業規模、利益の状況、家族構成、将来の展望によって、最適なプランは全く異なります。
例えば、手元の資金に余裕がないのに、節税のためだけに倒産防止共済に無理して加入するのは本末転倒です。

専門家のアドバイスが必要な理由

私も勤務税理士だった頃、制度の説明が不十分だったために、お客様に最適な提案ができなかった苦い経験があります。
その反省から、今は「なぜこのプランがあなたに必要なのか」を、とことん分かりやすく説明することを信条としています。
税理士は、あなたの会社の数字を一番よく知る外部のパートナーです。
客観的な視点から、あなたの会社に本当に合うオーダーメイドの節税プランを提案できます。

税務調査で見られる“チェックポイント”とは?

税務調査で必ず見られるのは、「その支出は、本当に事業のためですか?」という点です。
特に、家族への給与や交際費、プライベートとの線引きが曖昧になりがちな経費は、厳しくチェックされます。
日頃から、領収書や契約書などの証拠書類をきちんと保管し、「なぜこの経費が必要だったのか」を説明できるようにしておくことが、何よりの防御になります。

まとめ

今回は、顧問先が本当に喜んでくださった節税プランを5つ、ご紹介しました。

  • 家族への給与支払いは、家庭円満と節税につながる。
  • 小規模企業共済は、未来の自分への仕送り。
  • 倒産防止共済は、攻めと守りを両立する保険。
  • 経費の見直しは、宝探しのようなもの。
  • 高額な資産購入は、タイミングが命。

節税は、「知っているか、知らないか」だけで、手元に残るお金が何十万、何百万円と変わってくる世界です。
この記事が、あなたが税金と上手に付き合っていくための、最初のきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

「自分の場合は、どのプランが合うんだろう?」
「もう少し具体的に相談してみたい」

もしそう感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。
税理士は、あなたの事業の「味方」です。
敷居が高いなんて思わずに、となりの相談相手として、ぜひ頼ってくださいね。